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(早稲田スポーツ新聞会提供:記事 成瀬允、写真 喜柳純平、元田蒼、新藤綾佳)
「早慶戦は勝つしかない」(原聡監督、昭59理工卒)。両軍の意地とプライドが火花を散らす早慶定期戦(早慶戦)は今年で92回目を迎えた。今季初めての顔合わせとなったが、やるべきことはただ一つ。慶大を下す。それだけだった。試合開始から10分を経たない間に早大が2点を獲得。ワンサイドゲームのように思われた。しかし、相手の猛反撃を受け第3クオーター(Q)で同点に。最終Qでは怒濤(どとう)の攻撃で相手を攻め立てたが60分で勝敗はつかず、規定により引き分けで熱戦の幕が降りた。
試合の主導権を握ったのはエンジのユニフォームだった。前半3分にペナルティーコーナー(PC)の好機からFW糸賀俊哉主将(スポ4=島根・横田)が得点を挙げ、幸先よく先制に成功。さらに前半9分にも、MF大野誠弥(政経3=東京・早大学院)がサークル内へ打ち込んだボールに、FW清水拓登(スポ2=滋賀・伊吹)がうまく反応し追加点を奪う。完璧な立ち上がりで試合を優位に進めた早大だったが、前半終了間際に反撃の一発を浴び、1点のリードでハーフタイムを迎えた。
エンドが変わった後半も早大は果敢に攻め込み好機を演出したが「決めきれなかった」(糸賀)と、思うように追加点を奪えない。その矢先に、自陣への侵入を許しゴール前の混戦からボールを叩き込まれ2-2。早大のリードはなくなった。そして、迎えた勝負の最終Q。絶対に負けられない。その強い思いが激しく交錯する。一瞬たりとも集中を切らさず相手ゴールへと襲いかかる早大と、それに負けじとアグレッシブなプレーで応戦する慶大。互いに一歩も譲らない。まさに伝統の一戦と呼ぶにふさわしい、手に汗握る攻防が繰り広げられた。勝利をどちらに転んでもおかしくない。誰しもがそう思った。しかし、最後まで均衡が破られることなく、試合終了を告げるブザーが無情にも鳴り響いた。
「できることはやった」(原監督)と、持てる力の全てを出し切ったが、勝ちきれなかった早大。この1年間、チームを支えた4年生を花道で送り出せない悔しさが、涙となってあふれ出る。「もう二度とこんな思いはしたくない」(清水)。決意と覚悟を胸に、男子ホッケー部は新たな一歩をこれから踏み出す。そして、来季から主将を務める大野は力強く誓った。「責任を持ってこのチームを勝てるチームにする」と。