女子部 関東学生春季リーグ 駿河台大学戦

 (早稲田スポーツ新聞会提供 記事 安本捷人、写真 榎本透子)

 試合終了を迎えた選手の表情が見せたのは、嬉しさ、悔しさ、様々あれども、一番に『安堵』だったように思う。春季関東学生リーグ予選1位通過を賭けた駿河台大との戦いは、長く自陣でのプレーを強いられる苦しい展開の中で0-0のスコアレスドロー。幾度となく連なる敵の攻撃を最後まで受けきり、引き分けを『勝ち取った』。早大と駿河台大はともに予選を2勝1分で終え、得失点差で早大は2位通過。勝てなかった悔しさは残るものの、駿河台大に負けなかったことが大きな収穫だ。

 引き分けに殊勲賞を与えるなら、それはFB瀧澤璃菜(スポ3=岩手・沼宮内)とFB片倉優季(スポ2=山形・米沢商)のものだ。駿河台大との公式戦は2010年以降で14戦11敗3分。『格上』の相手は試合開始早々、速いパスワークで次々と早大ゴールへ間を詰める。それを防ぎ続けたのが底に位置する片倉、そして中央のFB片柳陽加主将(スポ4=栃木・今市)だった。2人がサークルの前で敵に当たり、ボールを奪う。片柳を中心とした粘り強いプレーで、守備から流れを呼ぼうと模索した。しかし前半14分、敵とマッチアップした片柳の顔面に打球が直撃。そのまま負傷退場となり、思いがけずDFの一角が崩れる。前半も半分を残しての事態にその影響が懸念されたが、ここから片倉と、左サイドから代わって片柳の位置に入った瀧澤が獅子奮迅の働きを見せた。手薄になった両サイドから敵の攻撃を許すも、それぞれに片倉、瀧澤が顔を出しサークルへの侵入を許さない。リーグ屈指のGK南有紗(スポ4=埼玉・飯能)も含め自陣に強固な壁を築いた。一方で、なかなか攻勢に転じることはできない。前半22分にFW福井更彩(法3=東京・早実)が1本目のシュートを放つが、ゴールの上。敵の素早いプレスにボールを奪われて前線までつなぐことができず、以降はシュートすら打つことができなかった。

 

 こう着状態のまま試合が終盤へ差し掛かると、駿河台大が早大サークル内へ入る機会が増える。MF南家未来(教1=京都・立命館)が足をつる素振りを見せるなど、高い集中力を保ってきた選手に心身の疲労が見えてきた。駿河台大はサークル内に縦へ繋ぐ強いパスで好機を演出。何度防いでも襲い掛かる敵のプレッシャーから、あわやというシーンも生まれた。残り5分からは攻守が目まぐるしく入れ替わる中で、駿河台大に5度目のPC(ペナルティーコーナー)。さらに続けて6度目のPCとピンチが続くが、全てを守り切って試合終了。長く苦しい70分間だったが、早大は負けなかった。

 

 得点の気配は遠かったこの試合。しかし、駿河台大を完封したことに大きな意味がある。これまでほぼ毎年リーグ戦で顔を合わせ、近年は無失点で切り抜けた試合が無かった。その中で片倉、瀧澤ら選手が一丸となってスコアに0を刻んだことは、このチームの長所を示す結果となる。ここでディフェンスはひとつの結果を出した。あとは、少ない好機をものにする決定力。総合力で劣る相手に対しても、守って、しのいで、ワンチャンスをものにしたい。3週間後の順位決定戦では、リーグ45連覇中の山梨学院大を迎えることになる。その圧倒的な攻撃力にどれだけ我慢し、一瞬の隙を逃さず攻め入ることができるか。ついに『4強』(山梨学院大、天理大、立命館大、東海学院大)との邂逅(かいこう)。現時点での真価が問われる一戦となる。